Datadog の請求が、毎月じわじわ上がっていく。サービスが育ってホストが増え、気づけば監視の費用が無視できない額になっている。そんな状況は珍しくありません。
請求書の内訳を開くと、インフラ、APM、ログ、Database Monitoring と項目が並び、どこから削ればよいのか分かりにくいものです。ただ、よく見ると「実は DB の監視だけが目的で、ほかの機能はあまり使っていない」というチームもあります。
その場合は、DB 監視だけを別のツールに切り出す選択肢があります。この記事では、費用が膨らむ理由を整理したうえで、切り出したときの違いと、向き不向き、移行の手順をまとめます。
料金の数字は、とくに断りがない限り 2026 年 11 月時点で Datadog の公式サイトに載っている米ドルの定価です。契約の条件や量によって変わるため、実際の金額は公式の価格ページと見積もりで確かめてください。
Datadog の費用が膨らむ理由
膨らむ原因は、大きく 4 つに分けられます。料金の仕組みそのものは Datadog とは?料金の仕組みと見積もりの考え方を整理 で詳しく書いているので、ここでは要点だけ挙げます。
ホスト課金で、DB のホストも数に入る
Infrastructure Monitoring は「ホストの数 × 単価」で決まります。Infrastructure Pro の定価は、年契約でホストあたり月 $15、月契約で月 $18 です。
アプリケーションのサーバーだけでなく、DB のホストも 1 台と数えられます。構成を冗長化したり、リードレプリカを足したりすると、そのぶん台数が増えます。
Database Monitoring は別の製品で、追加料金がかかる
クエリ単位の性能や実行計画を見る Database Monitoring (DBM) は、Infrastructure とは別の製品です。DB ホストごとに、年契約で月 $70、月契約で月 $84 が上乗せされます。
DB が 3 台あれば、Infrastructure の料金に加えて、DBM だけで月 $210〜$252 です。レプリカも DB ホストなので、監視したければその分も数に入ります。
カスタムメトリクスの超過
Infrastructure Pro には、ホストあたり 100 件のカスタムメトリクスが含まれます。枠を超えると、100 件単位で月 $5 が加算されます。
件数は「メトリクス名とタグの値の組み合わせ」で数えるため、タグを 1 つ足しただけで掛け算で増えます。DB のインテグレーションで集めた値も、カスタムメトリクスに数えられることがあります。
使いきれない機能の束
APM、ログ、RUM などを一式で契約していても、実際に見ているのは DB のダッシュボードだけ、というケースがあります。使っていない製品の課金が続いているなら、見直す価値があります。
逆に、全部を使いこなしているチームにとっては、一元管理できることが Datadog の大きな価値です。この点は後半で触れます。
DB 監視だけ切り出すとどうなるか
やり方は単純です。Datadog の Database Monitoring を外し、DB の監視を DB に特化したツールに任せます。
インフラ (CPU、メモリ、ディスク、ネットワーク) の監視は、次のどちらでも構いません。
- Datadog に残す
- Prometheus と Grafana のようなオープンソースの組み合わせに移す
切り出すメリットは 2 つです。
- DB 監視の費用を、ホスト数と切り離して見積もれる
- DB に特化した機能 (業務データの変化の検知、原因の調査の自動化など) を使える
一方で、見る場所が増えるというデメリットもあります。インフラの異常と DB の異常を 1 つの画面で突き合わせたい場合は、切り出さないほうが楽です。
DB 監視ツールの全体像は DB 監視ツールの選び方 にまとめています。候補を広く見たいときはこちらも参考になります。
Scandock との比較
切り出し先の一例として、Scandock と Datadog の Database Monitoring を並べます。Scandock は、DB の接続文字列を登録すると AI が監視項目の設計から異常の調査までを行うサービスです。
| 項目 | Datadog DBM | Scandock |
|---|---|---|
| 監視項目の設計 | 手動でクエリやメトリクスを設定 | AI が自動で設計 |
| 異常の判定 | 閾値を設定 | AI が推移から判断 (閾値なし) |
| 原因の調査 | ダッシュボードを人が見る | AI が自動で調査し、根拠つきで通知 |
| 対処 | 人が手動で対処 | 事前登録した対処を、承認つきで実行 |
| 対応 DB | MySQL, PostgreSQL, SQL Server, Oracle ほか | MySQL, PostgreSQL, SQL Server, MariaDB, TiDB, D1, BigQuery |
| 通知先 | Slack, PagerDuty, email ほか | Slack, Teams, Google Chat, LINE, kintone ほか |
| 料金 | ホスト課金 $70〜$84/月/ホスト + インフラ基盤 | 月額固定 ¥29,800〜 (ホスト数に依存しない) |
Datadog の料金は公式ページ (2026 年 11 月時点) の定価で、Scandock の料金は scandock.ai の料金ページの記載です。為替や契約条件で差が変わるため、金額の比較は自社の構成で試算してください。
設計思想の違い
表の上 4 行は、「人が決めて見る」か「AI が決めて見る」かの違いです。
Datadog は、見るべき指標とアラートの閾値を人が決めます。決めたものは細かく制御でき、クエリ単位の分析も深くできます。DB に詳しい人がいて、監視を作り込みたいチームには向いた作りです。
Scandock は、テーブルの構成と実データを AI が読み、何をどの間隔で見るかを決めます。閾値は置かず、推移から異常かどうかを判断します。決めるための手間を減らしたいチームに向いた作りです。
どちらが優れているというより、監視の設計に人の手をかけたいか、任せたいかの違いです。
費用の見方
Datadog は、台数が増えるほど費用が増える構造です。Scandock は月額が固定で、ホスト数に依存しません。
たとえば DB ホスト 5 台に DBM を月契約で付けると、DBM だけで月 $420 です。ここにインフラ基盤の料金が加わります。台数が多いほど、固定料金との差は広がります。
反対に、DB が 1 台だけの小さな構成では、Datadog の DBM のほうが安く収まる場合もあります。試算してから決めてください。
Scandock が合うケース、合わないケース
合うケース
- DB の監視だけできればよい
- 閾値を決めて調整する作業を減らしたい
- DB に詳しい人がチームにいない
- 通知先に LINE や kintone などの日本語圏のツールを使いたい
- 台数が増えても監視の費用を一定に保ちたい
合わないケース
- APM やログ、インフラと一元管理したい
- Oracle や MongoDB も同じ画面で監視したい
- すでに Datadog のダッシュボードやモニターを作り込んでいて、移す手間のほうが大きい
- クエリ単位の細かな分析を、自分たちの手で掘り下げたい
合わないケースに当てはまるなら、Datadog を使い続けるのが合理的です。費用を下げたいときは、使っていない製品を外すことから始めると、移行の手間が少なく済みます。
移行の手順
DB 監視だけを切り出す流れは、次のとおりです。いきなり Datadog を止めず、並行運用で確かめます。
- Scandock に DB の接続文字列を登録する。監視は読み取り専用のユーザーで行うため、本番に書き込む権限は渡さない
- AI が監視項目を設計するのを待つ (数分)
- 通知先 (Slack、Teams、Google Chat、LINE、kintone など) を設定する
- 1〜2 週間は Datadog と Scandock を両方動かして比べる
- 問題がなければ、Datadog 側の Database Monitoring を無効にする
4 と 5 の順番がポイントです。両方を動かす期間は、Datadog の DBM の料金が重なります。ただ、この期間があれば、これまで Datadog で気づけていた異常を Scandock でも拾えているかを確認できます。
比べるときは、次の 3 点を見ます。
- 過去に起きた障害と同じ種類の異常を、検知できるか
- 通知の内容から、原因の見当がつくか
- 誤報 (異常でないのに鳴る通知) が多くないか
Datadog の DBM を無効にしても、Infrastructure Monitoring はそのまま使えます。ホストの CPU やメモリの監視は、これまでどおり続けられます。
まとめ
- Datadog の費用は、ホスト課金、DBM の追加料金、カスタムメトリクス、使っていない製品の契約で膨らみやすい
- DB 監視だけを切り出すと、台数に左右されない費用で、DB に特化した機能を使える
- 一元管理が価値になっているチームや、Oracle などを監視するチームは、Datadog のままが合う
- 移行は 1〜2 週間の並行運用を挟めば、リスクを抑えられる
Datadog の請求書を見て、DB 監視の項目が気になったら、まず自社の DB ホスト数で試算してみてください。切り出すかどうかは、そのうえで決められます。