データベースの運用を誰に任せるかを決めるときは、月々の請求額のほかに、採用にかかる時間、外注の契約の範囲、兼任で請求書に載らない費用も比べる必要があります。この記事では 4 つの任せ方の費用を同じ物差しで比べる方法を説明します。何を任せる必要があるかは、先に DB に詳しい人がいない会社のデータベース運用 を読むと整理しやすくなります。
年間の総額とカバーできる範囲で比べる
任せ方ごとに費用のかかり方が違うため、月額や年収をそのまま並べても比べられません。次の 2 つをそろえてから比べます。
- 年間の総額: 給与や契約料だけでなく、採用の費用、立ち上がりまでの期間、兼任で削られる開発の時間まで含めた 1 年あたりの額
- カバーできる範囲: 夜間や休日に対応できるか、担当者が休んだり辞めたりしたときにどうなるか、知識が社内に残るか
4 つの任せ方の費用の項目
| 任せ方 | 主な費用 | 見落としやすい費用 | カバーできる範囲 |
|---|---|---|---|
| エンジニアの兼任 | なし (給与は既に払っている) | 削られる開発の時間、障害対応で止まる開発 | 担当者の勤務時間内。担当者が辞めると知識が残らない |
| DBA の採用 | 給与、社会保険料などの会社負担 | 採用の費用、採用までの期間、教育と学習の時間 | 1 人では夜間・休日・休暇を埋められない |
| 運用保守の外注 | 月額の契約料 | 契約範囲外の作業の追加費用、自社のデータの意味を伝える手間、契約を終えるときの引き継ぎ | 契約で決めた時間と作業の範囲 |
| 監視・調査のツール | 月額の利用料 | 導入の設定、通知を受けて直す人の時間 | 見張りと最初の調査は常時。直す作業は自社 |
兼任のコストの見積もり方
兼任は請求書が来ないため費用ゼロに見えますが、DB の運用に使った時間だけ、本来の開発が進まなくなっています。次の手順で見積もれます。
- 担当者が直近 3 か月に DB の運用に使った時間を数えます。障害の調査、遅いクエリの対応、問い合わせへの回答、監視の設定変更を書き出します。障害の調査は 1 回の時間が長く、記録に残っていないことが多いので、チャットの履歴やインシデントの記録から拾います。
- 年収に社会保険料などの会社負担を足し、年間の労働時間で割って、1 時間あたりの人件費を出します。
- 1 で数えた月あたりの時間 × 12 か月 × 2 の単価で、年額にします。
これに加えて、障害の調査で開発が止まった日の影響も考えます。リリースが遅れた、別の担当者が手伝いに入った、といった影響は時間だけでは表せませんが、比べるときには書き添えておくと判断を誤りにくくなります。
DBA を採用する場合
doda の職種図鑑では、データベース/セキュリティエンジニアの平均年収は 518.6 万円とされています (doda に登録した人の 2023 年 9 月〜2024 年 8 月のデータ。データベースとセキュリティのエンジニアを合わせた数字)。実際の費用は、これに社会保険料などの会社負担、採用の費用が加わります。
採用で費用以上に考えておきたいのは次の 2 点です。
- 採用までの期間: 求人を出してから入社するまで数か月かかることがあり、その間は今の体制のままです。
- 1 人では足りない場面: 夜間や休日、休暇中の障害は、1 人の DBA では受けられません。24 時間の対応が必要なら、交代の体制や外部の支援と組み合わせることになります。
一方で、DB の設計やチューニングそのものがサービスの競争力になっている会社では、知識が社内に溜まる採用の価値は大きくなります。
運用保守を外注する場合
データベースの運用保守を受ける会社の多くは、料金を公開せず、見積もりで決めています。契約の単位は会社によって違い、たとえばコーソルのリモート DBA サービスは、月 80 時間・月 40 時間・月 8 時間 (障害時の備え) のように、毎月の契約時間でプランを分けています。
目安を公開している会社もあります。株式会社一創は、システム全体の保守運用の想定例として、中小企業などで月額 5 万〜30 万円、24 時間の監視や手厚い対応を含む EC や金融などで月額 30 万円〜を挙げています。データベースに限った料金ではなく、実際の額は見積もりで決まると書かれていますが、規模の感覚をつかむ参考になります。料金は、対象の規模、監視の範囲、対応する時間帯、改修の量で変わるとされています。
見積もりを取るときは、次の点をそろえて比べます。
- 含まれる作業: 監視、障害の調査と復旧、パフォーマンスのチューニング、バックアップの設計、パッチの適用のうち、どれが基本料金に入っているか
- 対応する時間帯: 平日の日中だけか、夜間・休日も含むか。夜間の障害は電話だけか、作業までしてくれるか
- 対応の期限: 障害の重さごとに、いつまでに対応するか (SLA) が契約に書かれているか。たとえば重大な障害は当日中、軽微なものは翌営業日以内のように分けている会社があります
- 報告: 稼働の状況や対応の内容を、どの頻度で、どの形で報告してくれるか
- 超えたときの料金: 契約の時間や作業の範囲を超えた分の料金
- 業務のデータの扱い: 注文や決済のような業務のデータの異常まで見てくれるか、それとも DB のサーバーの状態だけか
- 本番のデータへの触れ方: 委託先の誰が、どの権限で本番の DB に入るか。作業の記録が残るか
- 終えるときの引き継ぎ: 契約を終えたときに、手順書や設定の記録を受け取れるか
監視・調査のツールに任せる場合
ツールの費用は月額の利用料が中心で、立ち上がりも早いのが特徴です。ただし、どのツールも「直す」作業までは代わりにしてくれないため、通知を受けて直す人は社内に必要です。
ツールの種類と料金の決まり方は、DB 監視ツールの選び方と主なツール で、OSS、クラウド標準、SaaS に分けて整理しています。比べるときは、DB のサーバーの状態だけを見るのか、遅いクエリや業務の数字まで見るのか、通知のあとの原因の調査まで任せられるのかを確かめてください。
見張りと調査を任せる方法
Scandock はデータベースの接続文字列を登録すると、AI がテーブルの構成と実データを読んで監視する項目を決め、異常と判断したら読み取り専用のクエリで原因を調べて通知するサービスです。料金は月額 29,800 円 (税抜) からで、DB サーバーにエージェントを入れる必要はありません。兼任のエンジニアが障害のたびに調べていた時間を減らしたい場合の候補になります。料金プラン と 原因の調査 で詳しく説明しています。